院長/アレルギー専門医 樺島 重憲(かばしま しげのり)

樺島 重憲 (かばしま しげのり)
院長/アレルギー専門医

えがおの森 こどもアレルギークリニック

生後5〜6か月になると離乳食が始まりますが、気になるのは食物アレルギー。食物アレルギーの発症メカニズムとその予防策を紹介します。また、研究でわかった「卵アレルギー」の防ぎ方・専門家が勧める「卵白」からのスタートについても紹介します。

樺島 重憲 (かばしま しげのり)院長/アレルギー専門医

えがおの森 こどもアレルギークリニック

1. 食物アレルギーとは?

食物アレルギーは、食べたものに含まれるタンパク質に対して、体の免疫機能が過剰に反応してしまう病気です。

反応が起こると、以下のようなさまざまな症状が現れます。

  • 皮膚の症状:じんましんなど
  • お腹の症状:腹痛、嘔吐など
  • 呼吸器の症状:咳、喘鳴(ゼーゼーする)、鼻汁など 
  • 全身の症状:重篤な場合には、ショック状態に陥ることもあります

発症しやすい時期

統計によると、食物アレルギーは0歳から1歳の乳児期に最も多く発症することがわかっています。そのため、赤ちゃんの時期から適切な予防対策をとることが非常に重要です。

食物アレルギーとは?

2. アレルギーが起きる「二重曝露仮説」のしくみ

なぜ、食べたこともない食品でアレルギーになってしまうのでしょうか?その鍵は、「皮膚」と「お口」の2つのルート(二重曝露仮説)にあります。

炎症のある皮膚から入ると「アレルギー」に

私たちの環境中には、目に見えないほど小さな食品タンパク質が飛散しています。赤ちゃんに湿疹や肌荒れ(炎症)があると、そこから食品タンパク質が入り込み、アレルギーの原因となる「IgE抗体」が作られてしまいます。

お口から入ると「食べられる(免疫寛容)」に

一方で、赤ちゃんが離乳食として食品を少量ずつ食べていくと、免疫システムがその食品を「安全なもの」だと学習します。これを「免疫寛容(めんえきかんよう)」と呼びます。

ポイント

食物アレルギーを発症するかどうかは、この「IgE抗体の産生(皮膚)」と「免疫寛容(お口)」のバランスで決まります。

アレルギーが起こる「二重曝露仮説」のしくみ

3. 今日からできる2つの予防策

① スキンケアを徹底する


湿疹がある場合は放置せず、しっかりと治療して肌のバリア機能を整えましょう。皮膚から食品タンパク質が入るのを防ぎ、IgE抗体を作らせないことが大切です。

② 離乳食を遅らせない

  • 少量から慎重に:最初はごく少量から始めます。
  • お母さんの食事制限は不要:妊娠中や授乳中にお母さんが特定の食品を避けても、予防にはなりません。
今日からできる2つの予防策

4. 研究でわかった「卵アレルギー」の防ぎ方

日本で行われた「PETIT研究」という臨床研究では、アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんを対象に、卵を食べる時期による違いを調査しました。
半分の赤ちゃんは生後6か月から卵を少しずつ食べ始めてもらい、残り半分の赤ちゃんは1歳になるまで卵を食べずに待っていてもらいました。
1歳になったところで全員に実際に卵を食べてもらって卵アレルギーの有無を調べたところ、早めに卵を食べ始めた赤ちゃんでは、アレルギーの発症が約1/5に留まっていました。

研究でわかった「卵アレルギー」の防ぎ方

5. 専門家が勧める「卵白」からのスタート

これまでの離乳食の進め方では「卵黄を先に」が一般的でしたが、現在、「卵白を先に進める」と考えるアレルギーの専門家が増えています。

その理由は2つあります。

  1. 予防できるのは「卵白」:免疫寛容を誘導して卵アレルギーを予防できる成分は、主に卵白に含まれています。
  2. 卵黄による特殊なアレルギー(FPIES)の回避:最近、卵黄を食べた数時間後に激しく嘔吐する「食物蛋白誘発胃腸症候群(FPIES)」が増えています。これは早めに食べても予防できず、成長とともに自然に治ることが多いため、卵黄はあえて急ぐ必要がないと考えられています。
専門医が勧める「卵白」からスタート

まとめ:赤ちゃんの「食べられる力」を育むために

  • 肌のケアが第一:湿疹がある場合は、まずしっかり治療しましょう。
  • 離乳食を遅らせない:アレルギーが心配な食材も、適切な時期から少量ずつ始めます。
  • 卵白の早期摂取:卵アレルギー予防には、卵白を早めに、少量ずつ取り入れることがカギとなります。

卵白パウダーなどは、加熱の手間も少なく、ごく少量を安定して与えることができる便利なツールです。医師と相談しながら、お子さんのペースで「食べられる力」を育てていきましょう。

まとめ赤ちゃんが「食べられる力」を育むために